Interview 茅ヶ崎の風景を毎日撮ることが、私のライフワーク

佐野しのぶさん

茅ヶ崎市東海岸北在住 佐野(さの)しのぶさん
小学校4年生のときに世田谷区から茅ヶ崎に転居。それ以来茅ヶ崎で暮らし、2人の子どもを育てる。現在は2人とも自立し、カメラマンの夫と暮らす。5年前から写真を始め、茅ヶ崎の風景をインスタグラムに毎日アップ。写真は『テラスモール湘南』の広告写真に使われるなど、評判を呼んでいる。

小4で感じた衝撃。「とんでもない田舎に来ちゃった!」

小学校4年生の時に世田谷区から茅ヶ崎に引っ越してきた佐野さん。最初は、東京とあまりにも違う景色に戸惑ったそうだ。「子どもながらにとんでもない田舎に来てしまった!と思いました(笑)」。ある日、自転車に乗る練習をしていた小学生の佐野さんは、きれいな赤い花が道端に咲いているのを見て、そのままペダルをこぎながら花に手を伸ばし…自転車ごと田んぼにドボン。今でも母親と笑いのタネになっているのだとか。

きれいな花に感動し、思わず手を伸ばしたというその感性は、大人になった今も大いに生かされている。佐野さんは、茅ヶ崎の風景を毎日撮影し、写真に収め発信しているのだ。

軽い気持ちで始めた写真によって、新しい世界が広がった。

佐野さんがカメラを始めたのは、2番目のお子さんが高校3年生になり、子育てが落ち着いてきた5年前。きっかけは「手前にピントが当たってる写真が撮りたくて」という軽い気持ちだったと言うが、そのうちにカメラにもこだわりたくなり、夫に相談。実は、佐野さんの夫は、サザンオールスターズなどアーティストのライブ映像を撮っているプロのカメラマン。コンパクトで軽くて女性にも持ちやすい、機能にも優れた一眼レフを勧めてもらい、購入。ますます写真に熱が入った佐野さんの足は、自然と海に向かった。

「撮り続けるうちに少しずつ、自分がどんな写真が好きなのかがわかってきました。私は景色だけよりも、人や生き物を一緒に撮ることが好きなんです。海を背景にして、老夫婦やサーファー、散歩中の犬などが入ると、写真の中に躍動感や物語性が生まれてよりドラマティックになります」

佐野さんが写真を撮るときに目指しているのは、写真から次のシーンが浮かぶような1枚。「例えばサーファーのパパに抱っこされた赤ちゃんの写真から、10年後、この子がこの海でパパとサーフィンをしている場面が想像できるような写真を撮りたい」

毎日違う表情を見せてくれる茅ヶ崎の海

佐野さんは、2年前からインスタグラムを開始。ほぼ毎日欠かさずに茅ヶ崎の風景をポストしているというのだから驚きだ。「フォローしてくれる人の中には、海が近くにないので写真を見ているだけでも癒されると言ってくれる人や、茅ヶ崎に憧れがある方もいて、とても嬉しいです」

16時に仕事を終えると、急いで自転車で海まで走り、カメラを構える毎日。「同じ場所に立っていても、海の表情はその日によってまったく違います。夕陽の大きさや波の具合、空や雲の形など、毎日違う色合いや美しさを見せてくれる景色に感動しますね」

夕陽に間に合わなそうなときは、とっておきの秘策を使う。茅ヶ崎駅改札を出てまっすぐ進み、「LUSCA」のエレベーターに乗り込み屋上へ。ここは美しい夕景が望める、佐野さんのお気に入りの場所なのだ。

茅ヶ崎の子は11月でもビーサン!?

海の近くで、子どもをのびのびと育てることができてよかったと自身の子育てを振り返る佐野さん。「茅ヶ崎は教育熱心な親御さんも多いんですよ。勉強に力を入れる方や、お子さんのサーフィンなどスポーツを熱心に見る方など方向性はさまざまですが、茅ヶ崎のいいところは、お互いに認め合って共存しているところ。

派閥に分かれることもなかったですし、子ども同士も偏りなくいろいろな人たちと遊んでいて、とてもいいなと思っていました。あとは、海の近くならではの教育だと思いますが、学校で「ビーチクリーン」の指導も頻繁にあったおかげで、子どもたちが大人になっても海をきれいにするのが習慣になっているのもうれしいです。悲しいことに海で写真を撮っていると、そういった意識のないゴミの捨て方にも遭遇しますので…」

佐野さんは少し寒くなってきた季節でも、撮影で海に出かけるときはビーサンを履くことが多いと言う。そこから話は、佐野家のビーサンにまつわるエピソードに。

「以前、家族で御殿場のアウトレットに行ったとき、当時小学生だった娘が11月なのにビーサンで出かけたんです。当然周りにはビーサンを履いている人は誰もいませんでしたが、現地で娘の同級生に偶然会って、足元を見たら彼女もビーサン(笑)。2人とも茅ヶ崎の子だね〜ってみんなで笑ったことを覚えています」

毎年、夏になると「げんべい商店」にビーサンを買いに行くのも佐野家のならわしだった。「子どもたちが小さいころは毎年サイズが変わるので、夏が始まる前に車で買いに行くのが恒例の行事でしたね。今年は何色にする?と車の中で話したことも楽しい思い出です」

撮影した海の写真が、ショッピングモールの広告チラシに!

佐野さんが毎日撮り続けている写真に新たな展開が生まれたのは最近のこと。

海を見ながら海岸で語り合う女性たち(中央上部)、富士山をバックに波に乗るサーファー(右下)の2枚が佐野さん撮影の写真。湘南・茅ヶ崎の日常を素敵に映し出す。

「実は、私の写真が10月31日に出る『テラスモール湘南』の折り込みチラシに使われることになったんです。「湘南ハッピー」のハッシュタグをつけた写真から選ばれたのですが、お話をいただいたときは飛び上がるくらいうれしかったですね。まるで写真コンクールで入賞したかのようなうれしい気持ちになりました。地道に一人で続けていたことに、こんなにうれしい展開が待っているなんて!」と佐野さん。

そして佐野さんは、いつか、もしもかなうなら、と夢の話をしてくれた。

「サザンオールスターズの桑田さんに私の写真を見つけてもらえたら最高ですね。実は40年以上前、アルバイト中にデビュー当時の桑田さんに会ったことがあるんです。思わず駆け寄って話しかけたのですが、とっさに出た言葉が『桑田さん!茅ヶ崎にもマクドナルドができましたよ!』とわけわからない内容で(笑)。自分でも「なんでそれ言った?」と思いますが、とても大切な思い出です。いつか、写真を通してもう一度お会いできたら…」と、大好きな写真を巡って、楽しい想像は止まらない。

軽い気持ちで始めた写真が、毎日の欠かせないライフワークとなり、それを楽しみに待ってくれる人が大勢いて、広告写真に使われるまでになった。次はどんな展開が待っているのだろう。

「これからも私が感じる茅ヶ崎の美しさや魅力を発信していきたいです」