Interview 自分の手で仕上げる、手彫りアートサンダル オリジナルデザインで特別な一足に

「Variety Store BEBET」の阿部俊行さんと弟子の斎藤貴之さん

茅ヶ崎市甘沼在住 阿部俊行(あべ・としゆき)さん
(写真左は弟子の斎藤貴之(さいとう・たかゆき)さん)

阿部さんは沖縄県糸満市出身。沖縄にいた頃から趣味で始めた手彫りのアートビーチサンダルを、茅ヶ崎に移住してからビジネスとして本格的に始動。「Variety Store BEBET」を立ち上げる。
藤沢市出身の斎藤さんは、イベントをきっかけに阿部さんに弟子入り。現在「BEBET」ではワークショップで手彫りの体験ができるほか、オーダーも受け付けている。今後は、オンラインでのレッスンも行う。

沖縄から茅ヶ崎へ!手彫りビーチサンダルにかける

「Variety Store BEBET」では、サンダル表面に絵柄や名前をデザインし、カッターなどで手彫するアートビーチサンダルの制作・体験事業を展開。世界でひとつだけのオリジナルビーチサンダルが自分の手で簡単に作れると話題だ。多くの人から親しまれ、茅ヶ崎ブランドにも認定されている。

代表の阿部さんは沖縄本島の最南端に位置するまち、糸満で育った。その頃は仕事をしながら、趣味でオリジナルのビーチサンダルを作っていたそうだ。

「当時はイニシャルを入れるぐらいでしたね。妹の子どもが生まれた時にイニシャル入りのビーサンをプレゼントしたり、父が好きな銘柄の泡盛のラベルを模写したものを彫ったり。家族や友人から頼まれたら作るという趣味の範囲でやっていました」

転機が訪れたのは8年前。茅ヶ崎市出身の妻の何気ないひと言がきっかけだった。「こういうサンダルは茅ヶ崎にはないよ。本格的にやってみたら?」

それを聞いた阿部さんは、茅ヶ崎行きを決意。「生まれ育った沖縄を離れて、冒険するために茅ヶ崎に出てきました」

茅ヶ崎に移住した当初は、沖縄との違いを感じる毎日だったという。

「地元から出てきたばかりの頃は、文化も人との距離感も全然違ったので本当に戸惑ったんですよ…。人の歩くスピードも車の速度も、沖縄に比べるととても早く感じました。洋服ひとつとっても、色彩感覚も沖縄とはまったく違って、鮮やかな色の服を着た自分がすごく浮いている感じがした。人との距離感も遠く感じられたし、とにかく全てがカルチャーショックでした」

やってきた当初は困惑した阿部さんだったが、時間をかけて少しずつ自分の心地良い環境にしていった。

「今では、ご近所の人も世間話をしにふらっとうちに立ち寄ってくれる。そういうつながりがあるのは安心。いつでも助け合える関係ができて、今はとても居心地がいいです」

茅ヶ崎に来て、手彫りのクオリティにも大きな進化があったそうだ。

「沖縄にいた頃は、趣味程度だったので『これくらいでいいか』とゆるい感じでやっていましたが、茅ヶ崎に来て、このビーサンを広めていきたい、お客さんが感動するものを作ろうと気持ちが切り替わりました。手彫りの細かさやデザイン画の緻密さなど、研究を重ねて鍛錬してかなりスキルアップできたと思います」

細やかなデザインの手彫りビーチサンダル

精神統一して挑む、フルオーダー作品

「BEBET」では、サンプルとなる絵柄を選んで、そこに名前を入れてもらえるセミオーダー、似顔絵やイラストなど自分の好きな柄を注文して作ってもらえるフルオーダーを受け付けている。

また、お客様自身で手彫りアートサンダルを作るための制作キットの販売も行い、制作のためのレッスンも行うという(コロナ禍での取組として、今後はオンラインのレッスンも行う予定)。

手彫りアートサンダルの制作キット
自宅で手彫りができるセット一式(¥3,000)。オンラインレッスンを受けることもできる。

阿部さんに、これまでに印象的だったオーダーについて聞いてみた。

「ある日、アーティスティックスイミングの水着デザイナーの方から、『タコが好きなので、リアルなタコを彫って欲しい』とフルオーダーの依頼が舞い込んできました。あの軟体類をリアルに彫るのは相当に難易度が高かったです。完成までに1か月ほどかかりました」

一度彫ったらやり直しがきかないため、フルオーダーは特に神経を使う。集中するため気持ちを整えることも大事だと阿部さん。「ひとりで始めた頃は大変でしたが、今は集中したいときに専念できる環境があるのでありがたいです」

今は「BEBET」はひとりではない。阿部さんには心強い味方がいるのだ。

子どもの誕生に「ファーストサンダル」を贈る習慣を茅ヶ崎に根付かせたい

阿部さんの一番弟子、斎藤さんとの出会いは、あるイベントで阿部さんのビーチサンダルブースにふらりと顔を出したことがきっかけだった。

「『僕も自分の名前を彫って欲しいです』とオーダーしようとしたら、『どうせだったら自分で作ってみな』と言われて、実際に体験してみたら面白くて。気づいたら働いていました(笑)」

「最初はうまくできなくて大変だった」と言うが、今では体験教室の講師を斎藤さんがメインで担当するほどに成長した。

取材に応じる阿部さん

斎藤さんに何か印象に残っているエピソードを聞いたら、最近お客様から『ファーストサンダル』の依頼をいただいたことと返ってきた。

「ご友人にお子さんが生まれたとのことで、ファーストサンダルをプレゼントしたいと、14cmのビーサンにお名前とお誕生日の日付、花の模様を彫りました。お客様にも、またお渡したご本人にもとても喜ばれたと聞いてうれしかったですね」

夏は靴よりもビーサン人口の方が多い(気がする)茅ヶ崎で、ファーストシューズならず、ファーストサンダルのお祝いとはこの地域らしい贈り物。オリジナルのビーチサンダルで歩き出す1歩は、親にとっても忘れられない記念になりそうだ。

心身がリラックスする、サザンビーチで夕日を眺める時間

リラックスしたいときはドライブに出かけることが多いという阿部さん。

「サザンビーチから江の島、七里ガ浜、葉山まで行って帰ってくるのがいつものコースです。葉山に漁船が数隻止まっているすごく小さな港があるのですが、どこか雰囲気が沖縄に似てるんですよ。ウチナータイムのようなゆったりとした時間が流れていて、育ったまちを思い出します。

近所だったらサザンビーチですね。夕暮れ時に行って、波の音を聞いているだけでも癒されますし、浜で子どもが遊んでる姿を見てもほのぼのします。やっぱり海はいいですね。よく行くお店は『ケイ オハナズ』。ハワイアン料理を食べながらオーナーと雑談して笑って、リフレッシュします」

島ぞうり

茅ヶ崎で始めてから、どんどん進化し続けるオリジナルアートサンダル。これからチャレンジしてみたい、新しいアイディアもある。

「大きなビーチサンダルを作ってみたい。茅ヶ崎らしい風景や文字を入れて、オブジェのような作品を作ってみたい。他にもサイズが合わなくなったり、履き潰したりしたビーチサンダルを回収して、そのパーツを集めて一足の大きなビーサンを作るのも面白そう。いろいろな案を思いつきますが、いちばんの目標はこのサンダルがもっと広がっていくこと。茅ヶ崎の人たちは、手彫りのビーチサンダルを履いているのが当たり前らしいよ、というくらいエリア全体の夏の風物詩になったらいいなと思います」

Information
Variety Store Bebet:http://www.bebet-chigasaki.com/
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